ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐 血の本(2) (血の本) (集英社文庫)

ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐 血の本(2) (血の本) (集英社文庫)

生ある者を暗黒の世界へ引きずりこむ女、ジャクリーン・エス。裏切られた愛ゆえか、超能力で男の肉体を冷酷無惨に破壊する!恐るべきリアリティで描きあげた血も凍る鮮血のスプラッタ・ホラー。

『もっと厭な物語』つながりでクライヴ・バーガーを読んでみる。
「血の本」などという恐ろしげなシリーズなので(表紙もめっちゃ怖いし…!)、スプラッタ満載なのかと思っていたけど、文学的な香りもする幻想的な部分とB級ホラーが融合した独特の読み心地でした。

『もっと厭な物語』にも載っていた『腐肉の晩餐』が一番いいかな。心理的な違和感がどんどん膨らんでラストは悪夢的なスプラッタ描写というバランスがすごくいい。
『地獄の競技会』は残虐シーンとレースの結果のユーモラスさの対比がおもしろい。
『ジャクリーン・エス』はラストシーンは美しく、胸がむかつくような男たちの殺され方もいいのだけれど、ジャクリーンがヴァッシ―のそばから離れて何をしたかったのかよくわからなくて消化不良。
『父たちの皮膚』は聖書をもとにしたSFっぽいストーリー、なんだよ、男が悪いんじゃん!
『新・モルグ街の殺人』、自分の過去の行動が自分の与り知らないところで最悪の展開を見せていた…というところで、最近読んだジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』を思い出した。哀しい中に滑稽さがある。

え?これで終わり?みたいなところもあったけど、どれも全く違った二つの要素が合わさって不思議で奇妙な味を出しているのが面白い。病みつきになりそう!