九時から五時までの男 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

九時から五時までの男 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

サラリーマン同様にスーツ姿で9時から5時まで勤めるキースラー氏には、妻にも言えない秘密がある。いつものように仕事先に赴いた彼はおもむろに手袋をはめ、用意した包帯をガソリンに侵していった…氏の危険で魅惑的な仕事ぶりを描いた表題作ほか、高齢化社会の恐るべき解決法を提示した「ブレッシントン計画」、死刑執行人が跡継ぎ息子に仕事の心得を伝える「伜の質問」など、奇妙な味の名手が綴る傑作揃いの全10篇。

『もっと厭な物語』に収録されていた「ロバート」が気に入ったのでこちらも読んでみた。どれもこれも冷や汗をかかされたりニヤリとさせられたりの奇妙な味が素晴らしい粒ぞろいの10の短編。

特に「ブレッシントン計画」のいじわるさったらたまらない!超高齢化社会の現在の日本だからこそ身につまされるところもあるけど、人間の心って繊細でもろいのか図太くて頑丈なのかわからないなぁってところがすごく面白い。

「神様の思し召し」や「不当な疑惑」、「蚤をたずねて」の人を喰った感じも好きだし、「伜の質問」みたいな思わず自分の胸に手を当てたくなるような、足元がぐらつくような感覚に襲われるのも好きだし、「九時から五時までの男」のユーモアあるラストも素晴らしいし、「運命の日」はエリン的世界そのもののようだし、本当にどこをとっても楽しめる作品集だった。